年頭のご挨拶 —コロナ後の活動—

第32期会長 伊藤 慎一郎

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New Year Annual Message – Post-Corona Activities –

Shinichiro ITO

明けましておめでとうございます。会員の皆さまにおかれましては、つつがなく新しい年をお迎えのこととお慶び申し上げます。昨年度は新型コロナという、思ってもいない強敵に人類は追い込まれ、人の行き来と経済活動が制限されました。それによって、東京オリパラは今年開催に延期され、オンライン会議、講演会等が急速に普及し、Society 5.0の到来を予感されるようになりました。

2020年9月に鹿児島開催の予定だった第48回可視化情報シンポジウムは、九州工大渕脇正樹教授実行委員長のもと、本学会としては初めてのオンライン講演会で開催されました。オンライン企業展示など工夫がありました。今後の講演会はリアルとオンラインのハイブリッドで進むと考えられますが、オンラインでのテクニックと経験が今後に役立てられるはずです。

技術に関わる研究者・教育者・企業関係者・学生の交流の場を提供するビジュアリゼーションワークショップも、今年はオンラインで行います。

前身である流れの可視化学会の誕生から50年という大きな節目となる第50回可視化情報シンポジウムが目前に迫っており、これを見通した開催計画を立案していきます。和文論文集、英文論文集(JOV)、学会誌の発行という学会の基本機能を着実に実行し、講習会もオンライン開催という新たな形式での一層の充実も図る予定です。会報会告を伝える年4回の季刊可視化情報学会誌は、Webによる速報性を考えて今までの会員サービスを落とすことなく、本年度より年3回の発行に切り替えますのでご了承ください。COVID-19は可視化情報学会が関係する国際学会にも影響が及びました。ISUD 12 (International Symposium on Ultrasonic Doppler Methods for Fluid Mechanics and Fluid Engineering)は2020年9月に神戸開催予定でしたが、コロナ禍で開催のめどが立たず中止に追い込まれました。2023年にスイス開催を目指しているとのことです。横野泰之前会長がチェアを務め可視化情報学会の協賛のISTP31 (31st International Symposium on Transport Phenomena) に関しては10月にオンラインにて開催されました。今年はISFV 20 (International Symposium on Flow Visualization)が6月に上海交通大学にて、FLUCOME 2021 (Fluid Control, Measurements and Visualization)も10月に北京航天大学にて開催予定です。ASV 16 (Asian Symposium on Visualization)は本来なら7月のタイにて開催予定ですが、ペンディング状態です。ISPIV(International Symposium on Particle Image Velocimetry)については未定です。これら国際会議に対しては日本開催を視野に入れ、中長期的な観点でサポート委員会を構成し、各国際会議組織委員会に委員を送り込んで日本のプレゼンスの強化を図っていきます。

可視化情報学会には、多様な学術・専門分野を背景とする方々が可視化という手段を介して集まっており、本学会の特徴である学際性や多様な価値の理解、グローバルな取り組みは今の時代に求められているものだと思います。このような特徴を再認識してポストコロナを意識して、継続的な活動に繋げたいと考えております。多様な学術が存在する中で、特徴ある学会として求心力を維持し続けるには、それぞれの学術の発展に伴う、可視化情報分野における新たな展開が欠かせません。将来の可視化情報に関する研究の柱の一つとなるような挑戦的な研究に期待をしており、可視化情報学会としての取り組みも必要と思っています。

皆さまには、益々のご健勝とご発展を祈念いたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

第32期会長 会長就任にあたって

第32期会長 伊藤 慎一郎

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Inaugural Address by the President for the 32th Term

Shinichiro Ito

コロナ禍のもと2020年8月6日に開催された初めてのオンラインによる可視化情報学会通常総会ならびに臨時理事会におきまして,第32期の会長に推挙され,就任することとなりました.

本学会のルーツは,1973年(昭和48年)の 「第1回 流れの可視化シンポジウム」を起源とした,1981年(昭和56 年) に誕生した「流れの可視化学会」にあります.1977年(昭和52年)に第1回流れの可視化国際シンポジウムを開催するなど,精力的な活動を行い,1990年(平成2年)に,「可視化情報学会」と名前を変え,社団法人化し,現在へと引き継がれています.2011年(平成 23 年) には一般社団法人「可視化情報学会」へ移行しています.

可視化シンポジウム48回,流れの可視化学会からの通算41代,法人化32期と,諸先輩方にはそれぞれの思いがある歴史を有した本学会の会長への就任は感慨深く,とても光栄に思うとともに,その重責に身の引き締まる思いです.

流れの可視化は流れ場の速度・温度など物質移動を非接触で定量的に多次元計測する方法として発展を続け,現在では,機械・航空・宇宙・土木・建築・海洋・気象などの理工学分野のみならず医学・農学・環境学といった様々な分野での有力な研究開発手法として活用されています.可視化はその対象が物理現象に限らず,社会科学,人文科学,アートを含み,ビッグデータといわれる膨大な情報をも取り扱う様々な現象の把握技術・認識技術と広く知られ,近年では,機械学習などとの組み合わせによる情報の活用技術として研究が進んでいます.日本学術会議においては新しい可視化パラダイムへの挑戦として元会長の小山田先生らにより創設された「科学的知見の創出に資する可視化分科会」を足掛かりに,可視化情報という学術分野を計算力学分野において,学会としてのプレゼンスを示し続けています.さらなる展開も目指します.

科学技術も十分に発展しリアルとバーチャルライフの切り替えもようやく可能になった時代に,新型コロナという想像だにしていなかった病禍に人類は直面しました.そして活動自粛とオンライン,テレワークを余儀なくされデジタルを通しての活動が充分に可能であることを我々は学び,大きなパラダイムシフトを経験しています.講演会,国際会議もオンライン化され,その良さも認識しつつありますがが,リアルのありがたみも再認識しています.

昭和,平成と進んできた学会としての歩みを振り返り,その資産を活かし発展を考えていた時の令和に入りすぐのパラダイムシフトは学会の将来を考える良い機会ではあります.多様な学術・専門分野を背景とする方々が可視化という手段を介して集まっているという学際性や多様な価値の理解という本学会の特徴はまさに現代社会に求められているものですが,本学会のプレゼンスをうったえるチャンスです.本学会が創設した複数の国際学会にも本学会のプレゼンスを強くアピールしていきます.

和文論文集,Journal of Visualizationと二つの論文誌を発行し,コロナ禍のもと開催される可視化情報シンポジウム,ビジュアリゼーションワークショップ,講習会,研究会など学会としての基本的な取り組みを継続しながら,アフターコロナも考慮しつつ国際会議も取り組みます.新たなビジョンを作成することは大きな労力を伴いますが,会員の皆さまのご協力が不可欠です.

可視化情報学会が魅力を発揮し,持続的な発展をしていくように,最大限の努力をしてまいりたいと思います.会員の皆様のご支援・ご協力を何卒よろしくお願いいたします.

(工学院大学工学部機械工学科教授
Professor, Department of Mechanical Engineering, Kogakuin University)

第30期 表彰

一般社団法人 可視化情報学会 第29期 学会賞

1.論文賞

受 賞 者:中澤里奈(TRL)、伊藤貴之、斎藤隆文
表  題:Analytics and Visualization of Citation Network Applying Topic-based Clustering
対象論文:Journal of Visualization, Vol. 21, No. 4, pp. 681-693, 2018.

2.技術賞(カテゴリⅠ)

受 賞 者:A. Z. Nazari, Y. Ishino, R. Yamada, T. Motohiro, F. Ito, H. Kondo, Y. Miyazato, S. Nakao
表  題:“CT (Computer Tomography) Measurement of 3D Density Distributions of High-Speed Premixed Turbulent Flames (Multi-Path Integration Image-Noise Reduction Technique Based on Novel Concept of Complex Brightness Gradient in Quantitative Schlieren Images)”
対象論文:The 18th International Symposium on Flow Visualization (ISFV-18), Zurich, Switzerland, June 26-29, 2018

3.技術賞(カテゴリⅡ)

対象者なし

4.奨励賞

受 賞 者:花崎 逸雄(農工大)
表  題:
熱揺らぎが支配的なメゾスケール熱流体現象の可視化と制御に関する研究
(1) セルロースナノファイバーによるコーヒーリング現象の抑制
(2) TIRF によるナノ流路内の トレーサー可視化における露光時間の影響*

対象業績:可視化情報,Vol. 37,Suppl. No. 1
可視化情報,Vol. 38,Suppl. No. 1*

受 賞 者:桑野 修(海洋研究開発機構)
表  題:可視化で進める地震研究
対象業績:可視化情報 Vol.37 Suppl.1(可視化情報シンポジウム), D111 (2017)

5.映像賞

対象者なし

6.貢献賞

対象者なし

第29期の学会賞以外の受賞者

1.第45回可視化情報シンポジウム ベストプレゼンテーション賞

1. 第46回可視化情報シンポジウム ベストプレゼンテーション賞
(1) 竹下泰史(北九州市立大)
「レインボーシュリーレン法によるショックトレーンの可視化」
(2) 北島雅文(工学院大)
「射出機を用いたテニスボールの空力特性計測」
(3) 杉岡洋介(東北大)
「粒子/色素吸着型ポリマーセラミック感圧塗料の特性評価」
(4) 宮城優里(お茶の水女子大)
「RGB-Dカメラで記録した歩行者軌跡のパターン分析と可視化」
(5) 西村京馬(立命館大)
「3次元計測点群データの奥行き強調可視化 ― 点線と点密度制御の活用 ―」
(6) 鳥取直友(東工大)
「慣性フォーカスとDLDマイクロピラーによる微粒子分離」
(7) 難波陽大(日本大)
「偏心型軸流式血液ポンプの内部流れの解明と生体適合性の評価」
(8) 中村崚登(神戸大)
「燃料インジェクター内におけるストリングキャビテーションの発生と
3次元流場構造の分析」
(9) 江口玲央(京工繊大)
「機能表面に沿う自然対流気液二相流の可視化画像計測」

2.第45回可視化情報シンポジウム アート賞

大賞

① 石井大地、桑田輝一(大分工業高等専門学校)
「Streamlines」
② 芹田真澄、武田咲希恵(東京理科大学)
「いろどり」

金賞

太田槙吾、市川拓弥(東京理科大学)
「”Watch” the sound」

銀賞

松岡大祐、荒木文明、佐々木英治(国立研究開発法人海洋研究開発機構)
「encounters of ocean currents and eddies」

3.第1回ビジュアリゼーションワークショップ

最優秀賞

学生の部:
「レーザ計測によって取得された大規模3次元点群の自動ノイズ平滑化と
高品質透視可視化」
内田知将, 長谷川恭子, 李亮, 田中覚(立命館大学)

大学院生の部:
「計測・同化・シミュレーションの3種類の海洋データを用いた
モード水領域の比較可視化」
矢野緑里, 伊藤貴之, 田中裕介, 松岡大祐, 荒木文明(お茶の水女子大学)

優秀賞

学生の部:
「スマートデバイスを用いたマルチエージェントモデルに基づく
津波避難疑似体験システム」
植野雄貴, 近真弥, 陳詩凌, 金澤功樹, 樫山和男(中央大学)

大学院生の部:
「南海トラフ巨大地震における大規模津波の数値シミュレーションに基づく
塩分変動ビジュアル解析」
森本行哉, 中田聡史, 長谷川恭子, 李亮, 田中覚(立命館大学)

第31・32期代議員

  1. 荒木 幹也(群馬大学)
  2. 石間 経章(群馬大学)
  3. 稲垣 照美(茨城大学)
  4. 梅村 篤志((株)IHI)
  5. 大石 正道(東京大学)
  6. 大石 義彦(室蘭工業大学)
  7. 大野 暢亮(兵庫県立大学)
  8. 大林 寛生(日本原子力研究開発機構)
  9. 尾上 洋介(日本大学)
  10. 小野 謙二(九州大学)
  11. 加藤 千幸(東京大学)
  12. 加藤 裕之(宇宙航空研究開発機構)
  13. 河合 秀樹(室蘭工業大学)
  14. 河村 拓馬(日本原子力研究開発機構)
  15. 木倉 宏成(東京工業大学)
  16. 木綿 隆弘(金沢大学)
  17. 熊谷 一郎(明星大学)
  18. 小池 俊輔(宇宙航空研究開発機構)
  19. 小林 美保((株)日立製作所)
  20. 小紫 誠子(日本大学)
  21. 佐伯 壮一(大阪市立大学)
  22. 坂本 尚久(神戸大学)
  23. 塩路 昌宏(京都大学)
  24. 神保 智彦((株)東芝)
  25. 瀬尾 和哉(山形大学)
  26. 高石 武久(宇宙航空研究開発機構)
  27. 高藤 圭一郎(西日本工業大学)
  28. 滝山 由美(旭川医科大学)
  29. 田中 洋介(京都工芸繊維大学)
  30. 田畑 隆英(鹿児島工業高等専門学校)
  31. 田村 善昭(東洋大学)
  32. 鳥居 修一(熊本大学)
  33. 永井 大樹(東北大学)
  34. 西野 耕一(横浜国立大学)
  35. 能見 基彦((株)荏原製作所)
  36. 長谷川 克也(宇宙航空研究開発機構)
  37. 長谷川 恭子(立命館大学)
  38. 林 亮子(金沢工業大学)
  39. 半田 太郎(豊田工業大学)
  40. 松田 寿(北海道科学大学)
  41. 村川 英樹(神戸大学)
  42. 村田 滋(京都工芸繊維大学)
  43. 森 眞一郎 (福井大学)
  44. 森 英男(九州大学)
  45. 山田 俊輔(防衛大学校)
  46. 山中 玄太郎((株)豊田中央研究所)
  47. 山本 恭史(関西大学)
  48. 横井 嘉文(防衛大学校)
  49. 横山 博史(豊橋技術科学大学)
  50. 渡邊 正宏(富士通(株) )
  51. 和田 雅直((株)インテージ)