平成25年度事業計画

学会の活動(第25期)

一般社団法人可視化情報学会は、昭和56年(1981年)に『流れの可視化学会』としてスタートし、本年で創立32周年の歴史となります。その間、会員諸氏の弛まない研鑽により、可視化に関する学術・技術は、理工学分野のみならず様々な分野で飛躍的に発展して、今や研究・開発・実践における有力な手段となってきた。さらに、近年はあらゆる分野で情報の種類、量とも飛躍的に増大しているため、社会からもその可視化についての期待は大きく、本会の果たすべき役割は今まで以上にますます重要になっている。それらの期待に応えるためには、会員同士の闊達な交流はもちろんのこと、国内外の関連分野との積極的な交流や協業が必至である。具体的には、今まで以上に、英文論文集や和文論文集、学会誌、各種書籍のさらなる充実をはじめ、国内外の会議やシンポジウムの主催や共催、講演会・講習会・研究会などの活発な開催、会員への情報アクセスの充実などを重点課題として実施する。一方、会員数は、会が発展的に活動していくための最も大きな源泉であるので,今後、会員数増強のために、各種の事業推進においては、「会員満足度向上」を強く意識し、その具現化に向けて、例えば、「新しい学術・技術分野との連携」や「技術者育成の企画」などに注力していく予定である。

2013年行事案内

日程 タイトル 開催場所,開催地 レポート
12/21(土)-22(日) 第5回横幹連合コンファレンス 香川大学, 高松市
12/3(火) CRDS設立10周年記念シンポジウム「日本が取るべき科学技術イノベーション戦略とは」 日本橋三井ホール, 東京都 中央区
11/29(金) 第19回ビジュアリゼーションカンファレンス(主催) タイム24, 江東区
11/18(月)~22(金) The 12th International Symposium on Fluid Control, Measurement and Visualization (FLUCOME 2013)
Nara Prefecture New Public Hall, Nara, Japan
11/12(火) 可視化フロンティア 第16回定期講習会
「PIV講習会2013 」
新大阪丸ビル別館 [PDF]
10/30(水) LIF・PSP・TSP講習会2013~第15回 可視化フロンティア~(主催) LMJ東京研修センター
10/23(水) 第39回横幹技術フォーラム 日本大学 経済学部, 千代田区 [PDF]
9/27(金)-28(土) 可視化情報全国講演会 会津2013(主催) 会津大学, 福島県 会津若松市 [PDF]
9/17(火)-21(土) 第4回噴流、後流、およびはく離流れに関する国際会議(ICJWSF-2013) 名古屋大学IB電子情報館, 名古屋市
9/2(月)-5(木) 7th world Congress on Industrial Process Tomography(Wcipt7) (協賛) Krakow, Poland
8/20(火)-22(木) 日本実験力学会2013年度年次講演会(協賛) 由利本荘市文化交流館「カダーレ」, 秋田県由利本荘市
7/16(火), 7/17(水) 第41回可視化情報シンポジウム(主催) 工学院大学新宿キャンパス
7/8(月) PIV講習会2013~第14回 可視化フロンティア~(主催) LMJ東京研修センター
前期:7/7(日), 後期11/24(日) CG-ARTS協会2013年度検定(後援) 全国都道府県の高校・高専・大学等300会場
6/19(水)~21(金) 第18回計算工学講演会(協賛) 東京大学生産技術研究所, 目黒区
5/29(水) -5/31(金) 第50回日本伝熱シンポジウム(共催) ウエスティンホテル仙台, 仙台市
5/19(日)-23(木) The 12th Asian Symposium on Visualization (ASV12) National Cheng Kung University, Tainan, TAIWAN
4/16(火)-18(木) 第47回空気調和・冷凍連合 講演会 (協賛) 東京海洋大学 85周年記念会館, 江東区
3/9(土) 文化フォーラム・名古屋 可視化が拓く科学の世界(ふしぎな現象を見てみよう) 名古屋大学ES総合館, 名古屋市 [PDF]
3/7(木) No.13-14講習会 流体騒音・振動(協賛) 東京大学生産技術研究所, 目黒区
1/28(月) -29(火) 第20回超音波による非破壊評価シンポジウム(協賛) きゅりあんホール, 品川区
1/24(木)-25(金) 第41回ガスタービンセミナー(協賛) 三菱重工横浜ビル, 横浜市
1/17(木) 技術者倫理-技術者管理のための行動の設計学-(協賛) 日本機械学会 信濃町煉瓦館, 新宿区

2013年4月のFlash

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  • 動画提供:
    佐藤慧拓(東洋大学 理工学部 生体医工学科 2年生)
    菊地謙次(東洋大学 理工学部 助教)

    望月 修 (東洋大学 理工学部 生体医工学科 教授)
  • o 蛍光色素をナンテン(Nandina domestica)の葉脈標本の葉柄より吸わせ,高解像度蛍光マクロ像を微速度撮影(15min/frame)することで,複雑に枝分かれした葉脈内の流れの観察を行った.葉の中心の比較的太い中央脈において吸水した水が先行し,分岐した側葉脈へ徐々に浸潤していく様子が確認できる.可視化動画は,2時間の現象を480倍速で再生している.葉長70mm,葉幅25mm,中央脈径450μm,側葉脈径120μmであり,分岐に伴いさらに脈径は細くなる.葉先端方向の吸水速度は,ロガリスティックに変化し,細管での毛管現象による吸水速度と解析的に近似できる.平均吸水速度10μm/sより,レイノルズ数Re=5×10-3程の現象となる.現在,葉肉組織や気孔機能の有無など,生体状態をパラメータとして葉における吸水メカニズムの解明に挑んでいる.

    自然美の織りなすこの天然マイクロ流れは,ナンテン?!

2012年11月のFlash

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  • 動画提供者:新潟大学大学院自然科学研究科教授 赤林伸一
  • ・先月のフラッシュに続く第三弾。一辺が300mmの立方体モデルに開口部2カ所40mm×40mm設置し、風向を開口に平行な条件の風洞実験を
    ソフトウェアクレイドル社のSTREAMを用いてLES解析した結果を動画表示したもの。動画の前半は立方体モデル周辺と立方体モデル内部
    の気流性状を、後半は立方体モデル内部のみの気流性状を表示している。先月のフラッシュ(PIV測定)と同様に風向に平行な壁面の両
    開口部からの接近流の乱れにより空気の流出入が交互に生じている様子がLES解析により定量的に把握出来る。

2012年10月のFlash

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  • 動画提供: 新潟大学自然科学研究科 教授 赤林伸一 新潟工科大学工学部建築学科 教授 富永禎秀
  • ・先月のフラッシュに続く第二弾。境界層風洞内(断面1.8m×1.8m)に設置した通風モデル(300mmの立方体、開口部2カ所40mm×40mm)を
    対象としたPIV解析結果の動画。風洞内風速は5m/s、対象モデルの開口部は風向に平行な壁面に設置されている。出力5Wのレーザーを用い、
    カメラの解像度は1024×1024pixel、撮影速度は500fps、PIV解析には直接相互相関法を用いている。先月のフラッシュと同様に風向に平行
    な壁面の両開口部から方の接近流の乱れにより空気の流出入が交互に生じている様子がPIV解析により定量的に把握出来る。

第23期 表彰

第23期 学会賞

論文賞

表  題: 「スペックル干渉法による骨折状態非侵襲評価システムの数値シミュレーション」
著  者: 山名田 信哉、村田 滋(京都工芸繊維大学大学院)、小梶 峻介(京都大学大学院)、田中 洋介、小野 裕之(京都工芸繊維大学大学院)
対象論文: 可視化情報学会論文集, Vol.30, No.10, (2010) 65-72
推薦理由: スペックル干渉法に基づいた骨折の非侵襲評価システムの数値
シミュレーション法を提案したものであって,スペックルパターンの時間変化を
数値シミュレーションから推定して後に,3層の弾性体モデルにこれを応用して
位置検出を行ったものである.スペックル干渉法を切断部内部状態の評価につな
げる手法の開発を行ったもので優れた論文であると判断した.

技術賞

表  題: ”Visualization of ripples on the surface of a rising bubble through an immiscible oil/water interface”
著  者: 植村 知正(関西大学)、植田 芳昭、井口 学(北海道大学大学院工学院)
対象論文: Journal of Visualization, Vol.14, No.2, (2011) 95-97
推薦理由: 本論文では,油水界面を通過する気泡の表面から生成されるマイクロ
水滴の発生メカニズムを明らかにするために,水に屈折率整合剤として31wt%の
ヨウ化カリウムを添加し,可視化画像から水膜を除去している.そのため,気泡と
水膜の間で発生する現象をより鮮明に捉えたものであり,マイクロ水滴生成の
メカニズム解明について貴重な成果がもたらされた.このように界面挙動を
可視化抽出する際に非常に有力な技術が提案されたものである.

奨励賞

受賞者: 太田 匡則(千葉大学大学院)
表  題: 「Colored grid background oriented schlieren (CGBOS)法による軸対称物体
まわりの超音速流れ場に対するCT 密度計測」
対象論文: 可視化情報学会論文集, Vol.31, No.9, (2011) 51-56
推薦理由: 本論文は,圧縮性流体の3次元密度分布を計測する手法として,
カラーグリッドパターンを背景画像に利用したCGBOS 法とCT法を組み合わせた
手法を提案し,軸対称物体である円錐形物体まわりの衝撃波構造の定量評
価を行うことでその有用性を示している.提案された手法は通常のBOS法
にさらに背景画像を2つのカラーストライプを直交させたカラーグリッド
パターンで与えることで,水平方向密度勾配・水平方向密度勾配分布を別々
に解析できるようにしており,また無風時の参照画像を必要としないこと
による観測条件の緩和や測定対象物体の大型化に向けた改善点を有してい
る.また,この結果をCT技術で3次元密度分布計測へと発展させており,
今後の高速流れ計測に有用な報告内容となっていると判断した.

第23期 映像賞

表  題: 「微小気泡内ストリーマ放電の進展とマイクロバブル放出」
著者: 西山 秀哉(東北大学流体科学研究所)、長井 亮介(東北大学大学院)、高奈 秀匡(東北大学流体科学研究所)
対象論文: 2011年6月のFlash
推薦理由: 液体中に設置したガス供給管側孔から噴出する2-3mm 径のアルゴン
気泡の界面に6kVで1kHzパルス電圧を印加した場合に発生するストリーマが気泡
界面内側に進展する際の挙動,気泡界面の凹凸変形,さらには気泡界面の崩壊
に伴うマイクロバブルの放出など,放電微小気泡の動的界面挙動を高速度撮影
した可視化動画は,世界でも例がなく,本学会の映像賞に値するものと判断した.

映像賞 フラッシュオブザイヤー

表  題: 「2011年3月11日東北地方太平洋沖地震(M9.0)により発生した地震波が
地球の表面を伝わる様子のシミュレーション結果」
著者: 古市 幹人、坪井 誠司、中村 武史(海洋研究開発機構)
対象論文: 2011年9月のFlash
推薦理由: 東北地方太平洋沖地震により発生した地震波のシミュレーションを可視化
したものである.シミュレーションは3次元非構造格子を用いて行われており,
本動画では,独自のポリゴン生成ツールの開発を行い,地球の内部構造により
同心円からずれる影響や波の振幅を3次元的表現により強調した可視化がな
された.地球の弾性的応答を理解する上で非常に効果的であり,直感的な理解
のしやすさから教育的効果も高いと認められ本学会の映像賞に値するものと判断した.

第39回可視化情報シンポジウム ベストプレゼンテーション賞

  1. 講演題目:Fl車柄開発におけるPIVの実用化
    講演者:中川 雅樹((株)豊田中央研究所)
  2. 講演題目:蝶の翅の打ち上げ/打ち下ろし時に形成される渦輪の挙動
    講演者:黒木 太一(九州工業大学大学院)
  3. 講演題目:単一ジグザク気泡の後流の三次元可視化
    講演者:橘 倫太郎(静岡大学大学院)

全国講演会(富山2011)ベストプレゼンテーション賞

  1. 講演題目:反回転渦対周辺に巻き付く三次元渦構造とその挙動
    講演者:渡辺 龍一(北見工業大学大学院)
  2. 講演題目:加振水槽における液面挙動の可視化と計測
    講演者:渡辺 久志(アイシン・エィ・ダブリュ㈱)
  3. 講演題目:第一原理分子動力学シミュレーションを用いたクラスレート
    水和物の振動解析
    講演者:平塚 将起(慶應義塾大学大学院)

平成24年度事業計画

学会の活動(第24期)

本学会は昭和 56 年に「流れの可視化学会」としてスタートし、平成 2 年の「可視化情報学会」へ
の法人化を経て、平成 23 年 6 月1日に、一般社団法人「可視化情報学会」としての新たな再出発を 行った。今回の公益法人改革への対応に際し、学術団体としての本学会の在り方と位置づけを再認識 したが、その社会貢献のあり形については、継続的に議論を重ねていく必要がある。

21 世紀の社会は、あらゆる分野で情報の種類や量が爆発的に増大しており、「可視化」はこれまで 以上に重要な技術・学術となってきている。学会とは学術分野で同じ興味をもった会員が集まり、会 員相互の情報交換を行うことで、より大きな学術的創成を進めるための学術集団である。また、学術 的創成は、産業界における実践を通じて初めて社会に還元されるものであり、本会も産学官の各々に とって魅力的な情報交換の場とする必要がある。すなわち、実験科学と計算科学などの先端的学融合 技術としての「可視化」を広範な学術分野で推進し、新しい概念の構築や学術創成につなげると同時 に、産業界での実践に応用するための活動を強化・推進していく。

具体的には、英文論文集 Journal of Visualization の継続的な発刊、国際会議の主催や共催への協 力による国際的情報発信の充実、和文論文集および学会誌発行についての更なる拡充、学会員への充 実した情報アクセスの提供、国内シンポジウムや講演会における情報共有、書籍の発行や講習会の開 催、研究会の活性化など、これまで本学会が実績を積んできた活動において、新たな視点で会員にと っての魅力を追求し、社会への還元の道筋を意識した事業を実施する。

平成23年度事業計画

学会の活動(第23期)

本学会は昭和 56 年に「流れの可視化学会」としてスタートし, 平成 2 年に社団法人「可視化情報
学会」として法人化を行った. 公益法人改革に対応して、平成 23 年 6 月1日に、一般社団法人「可 視化情報学会」として認可され、新たな再出発を行った。一般社団法人への移行に伴い、改めて公益 事業を進めていく学術団体としての可視化情報学会の在り方と位置づけについて、深い議論が重ねら れた。本来、学会とは同じ興味をもった会員が集まり、会員相互の情報交換を行うとともに、より大 きな学術的創成を進めるために、法人格をもった社会集団である。国際会議や学術論文集の発行を通 して社会に貢献し、人類の福祉向上のために活動を推進している事を改めて認識した。

21世紀において、「可視化」は重要な技術となってきている。流れの可視化技術においても、ハ ードウエアとソフトウエアの進歩により、より大量で詳細な情報が得られるようになった。また、情 報の種類や量も爆発的に増大し、情報の可視化技術はますます重要な技術となってきている。先端的 学融合技術である「可視化」をより推進させ、新しい概念の構築や、学術創成につなげていく計画と したい。具体的には、学会の英文論文集Journal of Visualizationを継続的にSpringer社より発刊 し、国際的情報発信の拡大と内容の一層の充実を図っていく。学会員はバックナンバーを含めて自由 にアクセスできるが、より容易なアクセス方法についても検討を進めていく。同様に,和文論文集お よび学会誌発行についても更なる充実・拡充を図る計画である.また、国際会議を主体的に主催・共 催し、国際的な情報発信を続けていく。国内シンポジウムも積極的に開催し、情報共有を進めるとと もに、新しい学融合を推進する。