第31期会長 横野 泰之
Inaugural Address by the President for the 31th Term
Yasuyuki Yokono
2019年8月7日に開催された可視化情報学会通常総会ならびに臨時理事会におきまして,第31期の会長に推挙され,就任することとなりました.
本学会のルーツは,1973年(昭和48年)の 「第1回 流れの可視化シンポジウム」を起源とした,1981年(昭和56 年) に誕生した「流れの可視化学会」にあります.1977年(昭和52年)に第1回流れの可視化国際シンポジウムを開催するなど,精力的な活動を行い,1990年(平成2年)に,「可視化情報学会」と名前を変え,社団法人化し,現在へと引き継がれています.20111年(平成 23 年) には一般社団法人「可視化情報学会」へ移行しています.
可視化シンポジウム47回,流れの可視化学会からの通算40代,法人化31期と,諸先輩方にはそれぞれの思いがある歴史を有した本学会の会長への就任をたいへん光栄に思うとともに,その重責に身の引き締まる思いです.
流れの可視化は流れ場の速度・温度など物質移動を非接触で定量的に多次元計測する方法として発展を続け,現在では,機械・航空・宇宙・土木・建築・海洋・気象などの理工学分野のみならず医学・農学・環境学といった様々な分野での有力な研究開発手法として活用されています.可視化はその対象が物理現象に限らず,社会科学,人文科学,アートを含み,ビッグデータといわれる膨大な情報をも取り扱う様々な現象の把握技術・認識技術と広く知られ,近年では,機械学習などとの組み合わせによる情報の活用技術として研究が進んでいます.また,元会長の小山田先生らのご尽力により,日本学術会議で「科学的知見の創出に資する可視化分科会」が創設され,新しい可視化パラダイムへの挑戦も行われています.可視化情報学会としては,この可視化情報という学術分野の一層の発展に寄与し,学会としてのプレゼンスを示し続けていくことが重要かと思っています.
31期では令和と新しい時代を迎えました.昭和,平成と進んできた学会としての歩みを振り返り,その資産を活かしつつ,将来に向かって決意を新たにする良い機会かと思います.このためには,ビジョンを皆様と共有することが重要です.多様な学術・専門分野を背景とする方々が可視化という手段を介して集まっているという学際性や多様な価値の理解という本学会の特徴は社会に求められているものと考えています.これをどの様に維持発展させるかを考える必要があります.また,プレゼンスという意味では,可視化情報学会は設立当初より,複数の国際学会と深い関わりを持っており,戦略的なこれらの国際学会の主催,定期的な日本開催が必要だと考えています.
和文論文集,Journal of Visualizationと二つの論文誌を発行し,可視化情報シンポジウム,ビジュアリゼーションワークショップ,講習会,研究会など学会としての基本的な取り組みを継続しながら,国際会議を開催し,新たなビジョンを作成することは大きな労力を伴います.会員の皆さまの協力をなくしては実現できません.昨今,学会には、その魅力や会員としてのメリットが問われていますが,自ら積極的に学会に関わることが,大学所属であっても企業所属であっても,自身の研究やキャリアに活きると信じています.また,そうなる学会活動にすべきと考えています.
可視化情報学会が持続的な発展をしていくように,最大限の努力をしてまいりたいと思います.会員の皆様のご支援・ご協力を何卒よろしくお願いいたします.