第35期会長 会長就任にあたって

第35期会長 榊原 潤


Inaugural Address by the President for the Thirty-fifth Term
Jun SAKAKIBARA

2023年8月8日に開催された可視化情報学会通常総会ならびに臨時理事会におきまして,第 35 期の会長に推挙され,就任することとなりました.どうぞよろしくお願いいたします.

本学会は,1973年に開催された「第1回流れの可視化シンポジウム」を起源として,1981 年に発足した「流れの可視化学会」を経て,1990年に「社団法人可視 化情報学会」として発足しました.その後,2011年には一般社団法人へと移行し,現在に至ります.毎年1回 開催されてきた可視化情報シンポジウムは本年で 51 回目にあたり,半世紀を超える歴史のある本学会の会長就任は光栄であるとともに,責任の重さを痛感しております.

私が可視化情報シンポジウムに初めて参加したのは,社団法人化直後の1991年でした.霞ヶ関の国立教育会館で開かれた当時のシンポジウムでは,従来の流れの可視化手法に加え,デジタル技術を用いた流体の温度や速度の測定法に関する講演が多くを占めていました.その後,同シンポジウムには「流れ」を対象とした研究以外にも,芸術や人文科学,社会科学などの分野を対象とした研究が多く加わるようになりました.自身の研究分野の学会に留まっていては決して出会うことの無いような研究者と知り合うことができるのは,本学会の大きな特色です.まさに分野横断型の学会であり,学術界の様々な分野に横串を通す役割を担っていると思います.

昨年末,生成 AI の ChatGPT が出現して以来,情報分野を中心に我々の社会全体が大きく変わろうとしています.その中で,本学会会員の研究分野である「情報の可視化」は,ブラックボックス化している AI内部の可視化を通じて大きな注目を集めることが期待されています.一方で,もう一つの主要な研究分野である「流れの可視化」においても,最新のAI やデータサイエンスを研究に活用する取り組みが活発化しています.

こうした情報関連分野の研究が注目されている状況の中で,本学会による国際会議の主催がこれまで以上に重要性を増しています.来年4月には,本学会が主催する第1回目の情報の可視化に関する国際会議「1st Japan Visualization Symposium」(JapanVis)が開催されます.この国際会議は Journal of Visualization と連携して情報系の可視化に関する発表を幅広く集めることで,日本の国際的プレゼンスの向上を目指すと同時に,これまで情報系の可視化の学生発表の機会を提供してきた「ビジュアリゼーションワークショップ」を統合することで学生の国際会議体験を同時に提供します.また,本年10月 には超音波流速計による流れの計測技術に関する国際会議である「14th International Symposium on Ultrasonic Doppler Methods for Fluid Mechanics and Fluid Engineering」(ISUD 2023)が予定されています.さらに,PIV に関する国際会議である「16th International Symposium on Particle Image Velocimetry」(ISPIV 2025)も,2025年6月に東京で開催することが決定しています.先日,米国サンディエゴで開催された同国際会議のバンケットに於いて次回開催都市が東京であることが発表された際には,拍手と共に大きな歓声が上がりました.欧米の研究者にとって日本が極めて魅力的な国であり,学術交流の場として高く評価されている表れと言えるでしょう.加えて,流れの可視化に関する国際会議「International Symposium on Flow Visualization」(ISFV 2025)も ISPIV と同時期に東京で開催することがこの度決定しました.

このように,今後2年間を通じて本学会主催の国際会議が日本国内でいくつも開催されます.これは国際会議ラッシュとも言える時期であり,本学会の主催によって,我々のグローバルなプレゼンスを向上させると共に,国内外の研究者との研究交流を一段と進める画期的なチャンスと捉えることができます.学会執行部としては,会員の利便性を最優先に考えながら,こうした国内外シンポジウムに加えて,講習会の開催や,和文・英文論文集の発行,研究会などを通じて本学会の運営を進めてまいります.会員の皆様におかれましては,ご支援とご協力を心からお願い申し上げます.