第30期会長 会長就任にあたって

第30期会長 宮地 英生

miyachi

Inaugural Address by the President for the 30th Term

Hideo MIYACHI

2018年8月8日に開催された可視化情報学会通常総会ならびに臨時理事会におきまして、第30期の会長に推挙され、就任することとなりました。学会の会長は初めて経験となりますが、学会の発展をめざし努力をしていきたいと思います。会員の皆様のご支援・ご協力を何卒よろしくお願いいたします。

本学会は1981年に「流れの可視化学会」としてスタートし、1990年に学会のスコープを広げ「可視化情報学会」となりました。高速度カメラを用いてトレーサ粒子を含む流れを高速度ビデオで撮影し、画像処理による流速を取得するPIV(Particle Image Velocimetry)は、情報処理と流体計測が融合した本学会を代表とする技術です。1990年当時に比べ、コンピュータの性能は飛躍的に速くなり、このような情報処理による計測領域はどんどん広がっています。ドローンを飛ばし、搭載されたカメラからの空撮映像から、地形や建物の3次元情報を取得することが普通に行われています。一方、「可視化」という単語も、一般的になりました。業務の可視化、取り調べの可視化、など、本学会で取り扱う領域とは異なりますが、物事を見えるようにする事が重要であるという認識が社会に浸透したことは喜ばしいことです。
このような背景のもと、本学会の役割はますます重要になってきていると考えられるのですが、残念ながら本学会の会員数は減少の傾向にあり、本学会の大きな課題となっているのが現実です。しかしながら、これは小手先の施策で解決できるとは思えません。学会にとって会員数は最も重要な指標です。会社で言えば売上に相当します。我々は売上を増やさなければなりません。しかし、会社が売上増を目指す時、「さぁ、明日から売り上げを増やしましょう」と言う社長はいません。売上を増やそうと努力するだけで、売上が増えるのであれば苦労はしません。通常、会社の社員は売上を増やそうと日々努力しているのですが、それでも増えないから困っているのです。
有能な経営者は、そのようなとき、売上げ増につながる具体的な施策を指示するのですが、残念ながら私自身には、ソフトバンクの孫さんやマイクロソフトのビルゲイツのような才能はありません。なので、申し訳ないのですが、みんなで考え、みんなでいろいろな解決策を試行していかなければなりません。会員数を増やすために活動をするのではなく、会員の満足度を上げるためには何が必要なのか、また、現在会員でない人に入会していただくためには何が必要なのか、学会の価値を高める活動を、みんなで考え実行していかなければなりません。その結果が会員数の増減となって表れるのです。
今年3月には、従来、民間企業と一緒に開催してきたビジュアリゼーションカンファレンスを学会主導のイベントとして第1回ビジュアリゼーションワークショップにリニューアルしました。これは、本イベントを工学分野に限らず幅広い分野のデジタル情報を可視化する研究者が集うイベントに成長させる第一歩です。また、本年度より、従来の全国講演会と可視化情報シンポジウムが統合するのは、会員が一同に会するイベントを志したものです。
これらの施策が成功するか否かは、今後にかかっています。なかなか、単年度で物事は変わらないものです。しかし、少しずつ世の中は変化していて、それに対応を続けなければ、気づいたときは流れに取り残されてしまっていることになります。これらの新しい試みの良かった点、良くなかった点を、しっかりと評価して改善をする必要があります。
また、この1年は理事会メンバーで可視化情報学会のあるべき姿を議論したいと考えています。そして、それを会員のみなさまと共有し、修正していく仕組みができればと考えています。
併せて、財政の健全化を進めます。会費収入の減少が続くのに、支出が同じでは財政が破たんしてしまいます。学会が成長基調になるためには、少し時間を要します。学会の持続的な発展のために、しばらく支出を抑える必要があります。
会員のみなさまと長期的に共有できるビジョンを考え、それを共有し、会員の皆様をはじめ、関係各位のご支援・ご協力のもと、より魅力的な学会にすることができればと思います。みなさまご協力のほど、重ねてお願い申し上げます。