第27期会長 渡邉 好夫
Inaugural Address by the President for the Twenty-seventh Term
Yoshio WATANABE
2015年7月21日に開催された可視化情報学会第27期定例総会におきまして、第27期の会長に推挙され、就任することとなりました。昭和56年(1981年)に「流れの可視化学会」としてスタートした本学会は、平成2年には「可視化情報学会」として、さらに広く「可視化情報に関する研究の進展と知識の普及のため」の法人としての歩みを進めてきております。発足以来34年の歴史を有する本学会の会長への就任をたいへん光栄に思うとともに、その重責に身の引き締まる思いです。皆様のご指導、ご支援をなにとぞよろしくお願いいたします。
ご承知のように、すでに「可視化」という言葉も広く社会に流布し、対象を的確に把握する技術・手法として認識されております。小山田耕二前会長は、この「可視化」への社会的な期待に応えるべく、本学会の領域拡大に尽力されてこられましたが、今期もそれを継承し、さらに発展させていきたいと考えております。
現在の社会や企業の活動はますます高度で複雑なものとなっており、現象の把握、メカニズムの解明に、また、情報の共有化に「可視化」は不可欠なものとなってきています。実際、私の所属する事務機器業界においても、トナー・インクの流れや紙の搬送挙動の可視化は、一般的なものとなりつつあります。さらには、製品の設計・開発やサプライチェーンのような多数の人と物が関わるプロセスや状態の可視化も進められております。
また、ビッグデータ時代と呼ばれるようにITやセンシング技術の飛躍的な向上により、従来は、基礎的なデータが入手困難だったために放棄されてきたことも、その可能性が見えてきました。たとえば、「人・物の流れの可視化」により、消費者の購買行動の把握や、災害時の人命救助や復興推進に活用されつつあります。
本学会も、この社会的な要請にいっそう積極的に取り組んでいかねばなりません。このため、各分野の要素となる可視化技術を深めるとともに、今後は分野をまたがる「可視化情報学」の共通的・基礎的側面についても検討していきたいと考えています。
これらを実現する基礎は、会員の皆様の研究開発や展開活動にかかっております。先端的な学術研究の進展、産業界との情報共有と可視化技術の展開、社会のへの普及と啓蒙にいっそう努めてまいります。
編集関係では、昨年度は和文論文集の投稿プロセスの改善により、大きく投稿数を伸ばすことができました。今期は、この流れを定着させるとともに、英文論文集Journal of Visualizationや学会誌もそのプレゼンスを高める施策を検討したいと考えております。
企画関係では、シンポジウム、研究会等の永続的な成功の基礎として、研究会の充実に取り組みたいと思います。また、先端的可視化技術の成果の普及・展開のため、従来の講習会に加えて、さらに新設の可能性も探って行きたいと考えております。
学会会員数は、学会発展の基礎であることは言うまでもありませんが、これまでの努力にも関わらず、残念ながら漸減傾向を脱却できておりません。今期は、さまざまな会員の増加策を模索してまいります。特に、産業界の会員の増強に注力してまいります。
おわりに、本学会発展のために献身的にご尽力頂いている役員や各委員会メンバーの皆様方に厚くお礼申し上げます。