第36期会長 会長就任にあたって

第36期会長 染矢 聡

Inaugural Address by the President for the Thirty-sixth Term

Satoshi SOMEYA

2024年7月21日に沖縄で開催された可視化情報学会通常総会・臨時理事会におきまして,第36期の会長に推挙頂き,就任することとなりました.何卒よろしくお願いいたします.同日,第52回可視化情報シンポジウムも講演数275件,参加者数500名に迫る大盛況のもとで無事に終了いたしました.大会開催委員長として,この場を借りて深く御礼申し上げます.

2025年は学会発足(1981)から45年,法人化(1990)から36年目です.学会の会員数が分野によらず押並べて減少傾向にあると言われ始めて10年以上が経ち,本学会会員数もピーク時の半数ほどになりましたが,シンポジウム(1973~)は過去52回で最大規模となりました.生成AIなどの情報化が急速に進むにつれ,本会で注力している情報可視化技術が世界的に注目されています.熱・流体分野でもデータ同化等による計測の超解像度化や予測技術に注目が集まっています.検出器の感度や分解能の向上に伴い,輻射の二波長計測器や歪計測器の商用化等,ハードウェア面での革新も世界で広がっています.国内所属会員数の減少に関わらず,流れ・情報の可視化は内外で広がり続けています.

一方,本会はJournal of Visualization (Springer; 2023 IF:1.7)を運営し,ISFV (Int. Symp. on Flow Visualizat- ion) / ISPIV (Int. Symp. on Particle Image Velocime- try) / ASV (Asian Symp. on Visualization) / ISUD (Int. Symp. on Ultrasonic Doppler methods for fluid mechanics and fluid engineering)など多くの国際学会も運営しています.これらの国際会議は本会発の会議であり,一部の会議では海外開催時においても本会のロゴを掲げて実施されます.本会は世界とのネットワークを有し,世界の可視化技術をリードしているといっても過言ではありません.2025年はこれらのうちISFV21 / ISPIV2025を6月21~28日にオリンピック記念青少年総合センター(東京・代々木)で連続開催します.それぞれの会議に毎回多くの研究者が世界から集う,流れの可視化を代表する2つの国際会議が連携する初めての試みであり,流れの可視化分野の過去最大規模の国際シンポジウムになると想定しています.沖縄にお集まり頂いた約500名の皆様,東京なら参加しやすいという技術者・研究者に,世界中の研究者を交えた大規模な国際技術交流の場であり,日本の研究者の国際的な位置づけを高め,国際技術交流促進の大きな機会になります.

また,国内会員数が減少傾向にある今,学会が世界を舞台に活動するきっかけとしても重要な場になると考えています.国際的な会員管理や紙媒体の学会誌の郵送などの壁が高く,これまで日本の学会は国内向けの活動が中心でした.しかし,WEB,各種決済システム,学会誌などメディアの電子化が日常的になり,自動翻訳の精度が極めて高くなった今,日本語を読解できない技術者が日本語で書かれた文書から有効な情報を抽出することも可能になっており,学会の国際展開の環境は整いつつあると言えます.近年は公的研究費公募等でも国際連携を問われる項目が増えつつあり,研究活動のグローバル化が一層求められつつあります.日本がイニシアティブをとり,グローバルに研究を展開するためにも,学会の国際展開は必然の流れと考えています.一朝一夕には成し得ませんが,第36期は来る国際化時代を見据えて基盤整備に注力して参ります.

シンポジウム,研究会,講習会や各種イベントなど学会の基本は「また参加したい」という思いを会員の皆様が抱く対面式の交流の場にあります.学生員が極めて少ない現状は短期的には変わりませんので,「研究室会員」など新たな制度を検討します.機会創出と制度整備を進め,技術交流を促進して参ります.

まずは2025年6月のISFV/ISPIVの成功に向けて,榊原35期会長や実行委員会に協力頂いている先生方とともに尽力して参ります.この国際会議ではMaster of Flow Visualizationと称する若手研究者・学生が可視化技術を競うイベントも予定しています.研究会,講習会も例年以上に活性化して参ります.事務局体制が強化され,安定して充実期に入りつつあり,今期は機械系関連学協会会長会議も本会が幹事学会として取り纏めるなど,関連学会連携を促進して参ります.

会員の皆様におかれましては,ご支援とご協力を心よりお願い申し上げます.